寸劇に見るアニメと現実のリンクの新しい地平 ラブライブ! サンシャイン!! 13話「サンシャイン!!」 より
ラブライブ!サンシャイン!!、13話「サンシャイン!!」の放送でひとまずTVアニメが完結。
でも新しい物語が始まりそう……な感じで、これからが楽しみ、という感想です。
それで13話「サンシャイン!!」内のミュージカル…というよりは寸劇パートが、非常にヤバイやつだ、と感じたので書きます。何がヤバイかって視聴者を作品内に登場させた、これです。作品内にさらに作品と視聴者の関係を生み出した、とも言えるでしょうか。
これがアニメと現実をリンクさせるラブライブ!という作品として物凄いことをやりやがったなと思ったのです。その上で、この部分には作品としての強いメッセージも含まれています。本当にすごい。
いきなり何言ってんだこいつ、となるのもさもありなんなので、順を追って述べます。
まず寸劇が行われた状況を整理してみましょう。
舞台はラブライブ!の地区大会。その観客に向けて、Aqoursのこれまでを説明します。誕生から、この日に至るまで(脚色はされていますが)。もともとAqoursを知ってる人もいるし、知らない人もいる、そんな観客に。
この構図ってアニメのラブライブ!サンシャイン!!という作品と視聴者の構図そのものですよね。視聴者の中にはもともとサンシャイン!!を知っていた人もいれば、TVアニメからサンシャイン!!に入った人もいます。そんな視聴者にサンシャイン!!、Aqoursのストーリーを伝えていく。作中の寸劇の構図そのものです。
そしてこの寸劇に作中の観客が反応を示します。「ごめんなさい!」に笑ったり。善子くんの登場に拍手したり。
その中でも一際目を引くのは曜さんの「千歌ちゃん、やめる?」に対し千歌さんが「悔しい、悔しいんだよ!」と返す部分への千歌さんのお母さんの反応です。それまでシリアスにステージを見つめていたお母さんが、千歌ちゃんの「悔しい」という言葉を聴いて、少し意外そうな顔色を浮かべます。
ここでは当然、第8話「くやしくないの?」での千歌ちゃんが梨子ちゃんに悔しさを爆発させるシーンを思い浮かべます。そのときの視聴者は展開をシリアスに見守っていて、そして「悔しい!」と千歌さんが気持ちを吐き出したときは、「おっ……言えた……」と少し意外な気持ちを抱いたのではないでしょうか。
ここにも作品への視聴者の反応、寸劇への視聴者の反応という構図の繋がりが見られます。
また、その後ライブに入る前の円陣で「1!」「2!」……「9!」と点呼が行われます。そしてモブ軍団が「10!!!」と叫びます。これは言わずとも現実のライブでの円陣・その点呼で見られた光景です(これはμ’sのライブで、ですけど!)。それで、よく見ると「10!」って叫んでる人もいれば、叫んでなさそうな人もいる(主観)んですよ、現実でもそうだったでしょう?ここで、この寸劇と現実はリンクしていることを明確に想起させてるんですよ。
このように、ラブライブ!地区大会の観客はまさしく視聴者そのものに見えます。その観客・視聴者の繋がりは『MIRAI TICKET』のライブでの演出にも見て取れます。ライブ終盤、千歌さんの「みんな一緒に……輝こう!」という掛け声、力強いソロパートに、浦の星女学院のモブ軍団が持ち場を離れて、Aqoursのステージに向かってきます。しかし……ステージには上がれません。
現実の視聴者は二次元の作品の中には入れません。作品を三次元で表現するライブのステージにも上がれません。そして、サンシャイン!!のアニメの中でも、観客はステージには上がれません。ここではステージに上がれないモブ軍団とステージ上のAqours、そこにまた"視聴者と作品"という関係があります。作品内に作品と視聴者の関係を生み出した、というのはそういうことです。
作品内に作品と視聴者の関係を生み出していること、これってとても凄いことだと思うんです。ラブライブ!という作品に限っても、これまでは
・二次元作品を三次元の存在で表現する
声優さんが二次元のキャラクターを様々な形で表現する。
・二次元作品と三次元の存在とでやりとりをする。
μ’s5thLIVE、アンコールムービーのコールアンドレスポンス等。
という形で”アニメと現実のリンク”が行われてきました。アニメ映像とコールアンドレスポンスした時の感動は今でも覚えています。そしてサンシャイン!!では
・三次元の存在を二次元作品で表現する
”作品”と"視聴者"を作品内に登場させる。
ということを成し遂げたのです。このことは、アニメと現実をリンクさせてきたラブライブ!という作品において、非常に大きな一歩であると感じました。そしてそんな勝負をTVアニメの最後に仕掛けることがまたすごい。これから先があるのなら、いったい次は何を見せてくれるのか、とても楽しみになりました。
ところで先程、「観客はステージにも上がれない」と述べました。それでもあのライブで、千歌さんは観客に向けて「一緒に輝こう!」と呼びかけています。そして観客とAqoursのメンバーは「みんな一緒に輝く」ことができたんですよ。これって先程の観客・視聴者の繋がりを考えると、スタッフからの強いメッセージに聴こえてきませんか?視聴者も、作品も、みんなで輝く物語、というメッセージ。
だからこその「君のこころは輝いているかい?」なのだと、僕は受け取りました。