ただ春を待つ

いろいろなもの

AYA UCHIDA Complete LIVE ~COLORS~ 感想

はじめに

―遅刻した経験なんて初めてなのだけど、なんで今回のライブTシャツを着てる人が会場を後にしようとしてるんだろう?それも1人ではなく。よくわからない。それに比べたら楽しそうに輪を囲む音漏れ無銭ガッツきマンズや、どうみても転売ウーマンな女性の方がまだ理解が及ぶ。そんな光景を横目に見ながら、武道館に駆け込む。始まる前から汗まみれ。

二階席の入り口をバタバタと探して、入場。ロビーから客席へと繋がる廊下に差し掛かると、外からも聴こえていた内田彩さんの歌声が、どんどん大きくなる。いざ場内に入った瞬間、見えるのは、真っ暗な場内いっぱいに、キラキラと煌くピンク色のサイリウム。そして、ステージで明るく照らされている内田彩さんひとり。歌声が聴こえる。

俗世から急に異世界に飛びこんだような、そんな強烈な感覚。少し通路で立ち尽くしてから、いやここは駄目でしょ、と「すみませんすみませんすみません!」と人と人のあいだをかきわけて、自分の席へ。二階席の結構後ろの方で、客席がよく見える。一息ついた所で、目に入る日本国旗。ここは武道館。満杯の客席、ステージにひとり立つ内田彩さん。その光景がやっぱりなんだか信じられなくて、しばらく呆然としていました。

 

後で知ったのですが、一曲目は「妄想ストーリーテラー」。自分が到着したのは二曲目の途中。納得すると同時に、これはライブの見え方がまるっきり違ってしまいそうだと思いました。なので、この感想は、そんな遅刻した人間、一曲目に「妄想ストーリーテラー」を通過してこなかった人間の書いたものだと、思って頂ければ。

 

曲は色鮮やかに 距離は近く

昨年の、有明コロシアムで行われた2ndLIVEの話になります。個人的にこのライブでは、「妄想ストーリーテラー」と「daydream」の二曲の存在がとにかく巨大でした。代々木フリーライブからはじまり、BDイベント、各種リリイベ、1.5thライブを経て、この"二曲"が如何に披露されるのか?という所に絶大な期待をしていたのです。そして2ndLIVE当日。途中で披露順が「アルバムの曲順と同じである」と客に察知させ、"二曲"の披露が近づいていることを認識させ、文脈をつくる。"その時"に向けて膨張していく意識。実際に披露された「妄想ストーリーテラー」と「daydream」。破裂する感覚。他の曲も勿論楽しかった、ダブアン「Breezin'」最高だった。でも自分としては、2ndはこの二曲のものだったような気がしてならないのです。

対して、今回は全ての曲、そのひとつひとつが、とても色鮮やかに、輝いていました。今回のライブでは、ライブの流れや展開による文脈的な曲の強度以上に(主に前述の2ndの話を想定しています)、それぞれの曲の純粋な強度がこれまでのライブより段違いでした。これは、ひとつひとつの曲の演出・表現がこれまでになく、具体的に突き詰められていたからだと思います。そう感じた一つの曲が「afraid…」。そのバキバキの演出。表情。カメラワーク。めちゃくちゃ怖い。怖かったです。内田彩さんがこういう表現をしたい、という具体的なビジョンを持っていて実際にそれを表現できる。更に、それを共に実現してくれるバンドメンバー・ライブスタッフがいる。とても素敵なことだと思います。

もちろん内田さんのことだから、それぞれの曲順にも細かい意味があるとは思うのです。一曲目の「妄想ストーリーテラー」なんてすごい意味深ですし。それを読み解いてから、またこのライブを観れたらなあと思います。

 

…2ndLIVEは"観る"ライブ、という感じがして、内田彩さんが物理的な距離以上に、すごく遠くて、少しの断絶を感じたんですよね。このままいくと、どんどん進化していく内田さんが表現し創造する景色を、客席から観て、感動する。そんな感じになるのかなあ、とか。とはいえ、1.5thLIVEとか、最近のツアーではそんな気持ちを抱きませんでした。なので、アリーナクラスの大きな会場、あるいは節目のライブでは、演出ゴリゴリの、観客が"観る"ライブにしていくのかな、とか思っていました。武道館なんて会場なら、尚更。

でも違いました、武道館でのコンプリートライブはめちゃくちゃ距離が近く感じました。内田彩さんだけじゃなくて、観客もライブに参加して、一つのライブを作っている感覚。一つ例を挙げると「Ruby eclipse」、「絶望アンバランス」、「キリステロ」の流れ。内田彩さん、バンドメンバー、そして観客がひとつのうねりを作っていて、「今、ライブに参加している!」という気持ちになりました。他の場面でも、沢山沢山、この気持ちを覚えたのです。

そこで、内田彩さんって何があっても内田彩さんだった、と強く感じました。 

声優として

 内田彩さんが声優だから、この表現・このライブを出来た。あるいは、内田彩さんが声優で培ってきたものが全部詰まっているライブだった。だから、内田彩さんが声優で良かった。そこに声優が歌手として活動する意味がある。もちろんこんな意見も、わかります。

でも自分にとって、内田彩さんが声優で良かった、と思う根本的な理由。それは内田彩さんが声優の仕事をしていなかったら、内田彩さんに出会ってなかったこと。これが何より重要で、一番です。内田彩さんが声優で、アニメに出ているから、アンテナの狭い自分でも内田彩さんを見つけることが出来て、こうして、素敵な歌を届けてくれる。とても幸せです。

すみれすまいる

「本人が楽しそうなのが良かった」という感想。内田彩さんのライブ後に参加者からよく流れてくるやつです。いつぞや自分も流した覚えがあります。ファンの共通認識なのかな、とは思っていたし、素敵な共通認識だと思っていました。だってあの人の笑顔、本当に楽しそうだし。そこに、今回の「内田さんのライブは、"笑顔"だよ」というスタッフさんからの言葉。ああこの気持ち、間違ってなかったんだ。この気持ちってみんなのものだったんだ。そう思うと、とても嬉しくて。

 

そして遂に発表された、"1st single"「すみれsmile」です。最高でしょう?